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疑惑の深層

「談合はあったか?」

−東松山市浄化センター等維持管理業務委託の入札で−

    <目次>
  1. 第1回 住民監査請求
  2. 第2回 損害賠償請求住民訴訟

2010年 8月 13日

去る平成21年3月26日、「東松山市民オンブズマンネットワーク」代表(以下請求人)は、「平成18年3月14日に実施された浄化センター等維持管理業務の入札で、業者の談合によって、市は4447万8千円の損害を被った」として、落札者の日本ヘルス工業株式会社と予定価格を漏洩した元市職員に対し、共同不法行為に基づく損害賠償請求権を行使することを市に求める住民監査請求書(以下監査請求書)を東松山市監査委員に提出しました。

浄化センター等維持管理業務にかかわる競売入札妨害事件については、すでに平成20年10月22日の判決で、日本ヘルスの社員A、B2名に対する有罪が確定し、控訴した元市職員Cについても平成21年2月に有罪が確定しました。若園敦雄裁判長は、判決で、「指名競争入札に応札した業者間で談合して入札額を調整するシステムが成立していたという事実が存在している。」と指摘しました。また、判決は、業者間の談合を認めるとともに、予定価格を漏らした行為は、日本ヘルスの利益となり、競争入札によって市民の負担を最小限にするという入札制度を大きくゆがめるものであり、「悪質である」と認めるものでした。

監査請求書は、この事件は「入札業者間による談合という不正行為により落札額が形成されたものであり、公正な競争入札が行われていれば落札率は低下したはずである。このことは、さいたま地方裁判所の判決理由の中に、『市に余計な出費をさせ、結局は市民に負担させた』と指摘されていることからも、明白である」と述べています。

監査請求書は、2003年6月13日徳島地裁判決、2004年1月15日大阪地裁判決などに基づき、談合損害金を落札額の20%、4447万8千円としました。また、監査請求書は、「平成21年1月16日の浄化センター等維持管理業務の入札では、予定価格2億5061万円に対し、アイテック株式会社が1億4160万円で落札していることを考えれば、20%以上の損害を、毎年市が被っていたことが容易に推察できる」と述べています。

市監査委員は、上記の住民監査請求について監査を実施し、関係職員からの事情聴取と提出資料に基づく事実確認を行いました。

請求人への通知は、「第3 監査の結果 (2) 本件入札における談合について」で、「有罪判決を受けた元職員の罪名は競売入札妨害罪である。また、本件入札に関して談合罪で確定判決を受けたものはなく、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下独占禁止法という。)に基づく公正取引委員会による排除措置命令、審決等の措置も取られていない。」と述べ、談合の事実は確認できないと主張しました。

結局、監査委員は、

  1. 独占禁止法第26条に基づく損害賠償請求権は排除措置命令又は審決が確定した後でなければ裁判上主張できないとされている。
  2. 本件入札を1999年版積算要領で試算し比較した場合、本件入札額が入札試算より約1割低くなっており、本件入札実施額は不当に高いとは言えない。
  3. 元職員が予定価格を日本ヘルス社員に内報したことは事実だが、それによって他の入札参加業者が予定価格を知り得たとは判断できない。
  4. 内報した事実のみをもって市に損害が発生したと判断することはできない。

の4点の理由に基づき、「東松山市が日本ヘルスと元職員に対し損害賠償請求権を有しているとは認められない」と判断し、請求を棄却しました。

請求人は、これを不服とし、平成21年6月19日、さいたま地方裁判所に提訴しました。

2010年 9月 03日

「東松山市民オンブズマンネットワーク」代表(以下原告)は、平成21年5月22日の監査委員の通知で住民監査請求が棄却されたことを不服とし、平成21年6月19日、さいたま地方裁判所に提訴しました(被告は「東松山市長」。原告訴訟代理人として弁護士9名)。

党議員団は原告に取材しました。訴状の要旨は以下の通りです。

(請求の趣旨)

原告側は、

  1. 「市長は元市職員と日本ヘルス工業株式会社に対し、市に対する損害賠償として、7020万円を支払うよう請求せよ」
  2. 「訴訟費用は被告の負担とする」
の2点を求めています。

(請求の原因)

原告側は「市による違法な財務会計行為」があったとしています。「違法な財務会計行為」とは、共同不法行為による損害賠償請求権が発生したにもかかわらず、市がそれを行使しないのは地方自治法第242条第1項の「違法に・・・財産の管理を怠る」に該当するもので、損害賠償請求権を行使しないことは違法であるというものです。

(共同不法行為)

訴状によれば、この「共同不法行為」とは、元市職員の「価格漏洩行為」及び元市職員と日本ヘルスによる「入札妨害行為」を指しています。

さいたま地方裁判所は、これらの行為について、平成20年10月22日、偽計競売入札妨害罪で元市職員に対し懲役10ヶ月執行猶予3年、日本ヘルスの2名の職員に対しそれぞれ懲役8ヶ月執行猶予3年と懲役10ヶ月執行猶予3年の刑を言い渡し、控訴した元市職員も平成21年2月18日の東京高裁で控訴が棄却され、有罪が確定しました。

この判決が「事件の背景には指名競争入札に応札した業者間で談合をして入札額を調整するシステムが成立していた」と述べていることに基づき、原告側は「談合罪で処罰された者はいないものの、談合があったと認めている」と指摘しています。

具体的には、平成15年から18年まで日本ヘルスが落札率98%〜99%で「市野川浄化センター維持管理業務」を落札しており、事件となった委託業務の入札は、平成18年3月14日に6社によって行われ、日本ヘルスがほぼ入札予定価格(2億1192万円)どおりの2億1180万円、落札率99.9%で落札しました。

これについて、原告側は、事件発覚後に行われた平成21年1月16日の当該業務の入札では、当該業務のほかに、「汚泥コンポスト施設維持管理業務」が加わり、2億5061万円の予定価格に対し、アイテック株式会社が1億4160万円で落札し、「落札率は56.5%であり、このことからも談合の存在が裏付けられる」と指摘しています。

(元市職員と日本ヘルスの責任)

原告側は、元市職員は価格漏洩行為により、参加予定業者間の談合を利用して日本ヘルスに落札させ、故意に市に損害を与えたとし、元市職員の行為と市の損害には因果関係が認められるので、元市職員は民法709条(不法行為)に基づいて市の損害を賠償する責任を負うと指摘しています。

また、原告側は、日本ヘルスは2名の職員の使用者として使用者責任を負い、民法719条(共同不法行為)に基づいて市の損害を賠償する責任を負うと指摘しています。

(損害の発生及び額)

原告側は、違法行為が明らかとなった平成18年3月14日の落札価格と、正常な競争が行われた場合の落札価格(適正競争価格)との差額相当額の損害が生じたと主張しています。

当該業務に「汚泥コンポスト施設維持管理業務」を加えた平成21年の入札予定価格2億5061万円は、平成18年の当該業務の入札予定価格(2億1192万円)に同年の「汚泥コンポスト施設維持管理業務」の入札予定価格(3193万円)を加えた額2億4385万円よりも高くなっています。これについて原告側は、平成21年の入札では、アイテック株式会社が両業務を1億4160万円で落札しているので、これは当該業務が1億4160万円でできるということを示していると指摘しています。

以上の指摘に基づいて、原告側は、「汚泥コンポスト施設維持管理業務」が付加された平成21年の落札額1億4160万円と当該業務のみの平成18年の入札額2億1180万円との差額7020万円が市に生じた損害額であると主張しています。